キャラクター同士の「距離感」を一枚絵に込める|イラスト制作を手がける土居だもんさんインタビュー

インタビュー

キャラクター同士の距離感や空気感、日常の一瞬を切り取ったイラストを手がけるイラストレーター・土居だもんさん。

一枚絵や配信用イラスト、キャラクターデザイン、ゲーム用スチルなど幅広く制作し、にじさんじ×pixiv「Page of Lambda」作品コンテストではイラスト賞を受賞しています。

今回は、イラストレーターとして活動するまでの歩みから、人物同士の関係性を一枚の絵へ落とし込む考え方、用途に応じた描き分け、依頼制作で大切にしていることまで伺いました。

制作だけでなく、営業やコンテストへの挑戦も

――現在は、どのようなイラスト制作や活動をされていますか?

現在は、個人・企業からのご依頼を中心に、キャラクターデザインやイラスト制作、ゲーム用のスチルイラスト・キャラクター立ち絵など、幅広い制作に取り組んでいます。

これまでには、VTuber関連のイラスト制作やキャラクターデザイン、PRイラスト、「Page of Lambda」のファンメイドゲーム『Piece of Lambda』のスチルイラスト・キャラクター立ち絵、noteのサムネイル、配信プラットフォーム向けの立ち絵などを制作してきました。

現在は、商業イラストレーターとして継続的にお仕事をいただけるようになることを目標にしています。

月30件ほどを目安に企業や個人への営業を行ったり、月3〜5件ほど興味のあるイラストコンテストに応募したりしています。

また、SNSを通じて作品を知っていただく機会を増やすため、ファンアートの制作や他のクリエイターの方との交流も続けています。

制作そのものだけでなく、イラストを仕事につなげていくための活動にも力を入れています。

「自分が描いた絵が、誰かに届いている」と実感した転機

――イラストを描き始めたきっかけや、現在の活動につながるまでの経緯を教えてください。

イラストは、物心がついた頃からずっと描いていました。

幼い頃から、絵を描くと周りの人が褒めてくれたり、興味を持ってくれたりする環境に恵まれていたこともあり、自然と「将来は画家など、絵を描く仕事に就きたい」と考えるようになりました。

中高生の頃はバスケットボールをしたり、友人との時間を大切にしたりと、絵以外のことにも多くの時間を使っていましたが、絵を描くこと自体は好きで、少しずつでも続けていました。

その後、2020年に大阪芸術大学のデザイン学科へ進学しました。ただ、慣れない環境やコロナ禍の影響などが重なり、在学中に心身の調子を崩して休学し、2024年に大学を自主退学しました。

大学を辞めた後は、自分の将来について悩み、先が見えず苦しい時期もありました。それでも絵を描くことを支えにしながら、自分に無理のない範囲で制作を続けていました。

大きな転機になったのが、2024年に開催された、にじさんじ×pixiv「Page of Lambda」作品コンテストです。

「ラキミーまでの道のり」という作品でイラスト賞を受賞し、翌2025年には「にじさんじ 7th Anniversary Festival」で受賞作品を展示していただきました。

実際に会場へ足を運び、自分の作品の前でさまざまな方が足を止めたり、写真に収めたりしてくださっている姿を見て、「自分が描いた絵が、実際に誰かに届いている」と強く実感しました。

その経験を通して、「自分にはやはり絵を仕事にしていく道しかない」と改めて強く思うようになりました。

それ以来、制作だけでなく、コンテストへの応募やSNSでの発信、営業などにも積極的に取り組んでいます。

土居だもんさんが手がけたVPL6期生あゆみさんハロウィンイラスト2025

「見た人にどう感じてほしいのか」から表現を考える

――ご自身では、現在の作品や作風にどのような特徴があると感じていますか?

自分の作品は、表面的な絵柄そのものは共通していても、イラストの用途や目的によって表現の出力をかなり変えているところが特徴だと思っています。

単純に「この絵柄で描く」というより、その作品を見た人に何を感じてもらいたいのか、何を一番伝えたいのかを考えたうえで、演出や情報量を調整することを意識しています。

例えば、SNSに投稿するコミカルなイラストでは、キャラクターの特性や感情を少しオーバーに表現したり、背景やエフェクトを調整したりしながら、最初に見たときに「何が起こっているのか」がすぐに伝わるよう設計しています。

一方、美麗系のイラストでは、キャラクターだけではなく「そのキャラクターが存在している空間そのもの」が一つの作品になるよう意識しています。

色や光のコントラスト、キャラクターの自然体な表情や仕草などを大切にし、どこか儚さや懐かしさ、その場の趣のようなものを感じてもらえる表現を目指しています。

コンテストやお仕事では、自分が描きたいものだけを優先するのではなく、クライアント様や主催者が何を求めているのかを考えることも大切にしています。

用途によって表現は変わりますが、共通して大切にしているのは「この作品を見た人にどう感じてほしいのか」を考えることです。

土居だもんさんが手がけた一枚絵イラスト

特別な一枚「ラキミーまでの道のり」

――特に思い入れのある作品について教えてください。

「Page of Lambda」作品コンテストでイラスト賞を受賞した「ラキミーまでの道のり」です。

自分にとっては、単に賞をいただいた作品ではなく、イラストレーターとしてもう一度前を向くきっかけをくれた、特別な一枚です。

今振り返ると技術的に拙いと感じる部分もありますが、それでも当時の自分にできることはしっかりやり切ったと思える作品です。

今年初めて「にじそうさく」に参加した際には、この作品を見て以来ずっと応援してくださっていた方が挨拶に来てくださり、新刊を購入してくださいました。

一枚のイラストがその場限りで終わるのではなく、時間が経ってからも誰かとのつながりを生んでいる。

そのことを実感できたのも、この作品を特別に感じている理由の一つです。

土居だもんさんが手がけた「ラキミーまでの道のり」

キャラクター同士の「距離感」を、言葉にならないところまで描く

――キャラクター同士の関係性や、その場面の感情を一枚のイラストとして表現するとき、どのようなことを意識していますか?

2人以上のキャラクターを描くときは、まずそのキャラクター同士がどのような関係なのか、その「距離感」をイメージするところから始めています。

例えば友達といっても、親友のような関係もあれば、会えば挨拶をするくらいの関係もあります。

恋人でも、いつもラブラブな二人もいれば、少し落ち着いた関係や、長年連れ添った夫婦のように阿吽の呼吸がある関係もあります。

そうした、人間関係の中にある言葉では完全には説明できないグラデーションを、自分がこれまで出会ってきた人たちの関係性とも照らし合わせながらイメージしていきます。

そのイメージができたら、そこから資料を集めます。こういう場面では、イラストよりも、生身の人間が写っている写真を参考にすることが多いです。

人間の視線のわずかな揺らぎや、身体の自然な傾き、筋肉の動きや緊張感など、イラストとして整理された資料だけでは拾いきれないニュアンスがたくさんあると思っています。

感情についても、単純に「笑顔だから嬉しい」「泣いているから悲しい」という記号だけではなく、言葉にはしきれないけれど確かに感じ取れるものを、絵の中に宿せたらと思っています。

また、VTuberさんを描くときは、その方の配信や切り抜きなどを事前に見て、人となりを知ることも意識しています。

見た目や設定だけではなく、「普段どういう話し方をするのか」「どんなときにどういう反応をするのか」といった情報まで知ることで、自分なりにそのキャラクターへの理解を深めてから描いています。

土居だもんさんが手がけたファンアート

「日常の一瞬」は、実体験や記憶から生まれる

――「日常の一瞬」を描くとき、どの場面を一枚のイラストとして切り取るかはどのように決めていますか?

きっかけになるのは、大型イベントやコラボ配信など、VTuberさん同士の印象的なやり取りがあったときですね。

コミカルなイラストであれば、実際にあった面白い場面を描き起こしたり、そこで受けたインスピレーションを別のシチュエーションへ発展させたりしながら、「こういうことあるよね」と共感してもらえる場面にすることがあります。

一方、美麗な一枚絵の場合は少し考え方が違います。

例えばお祭りの絵を描くなら、資料を見るだけではなく、自分がお祭りへ行ったときの記憶を思い浮かべ、そのときに感じた空気や情景に身を委ねるような感覚で描いています。

そういった情景が大切になる作品ほど、あえて「描かない部分」を作ることもあります。

見る人によって思い出や価値観、何を美しいと感じるかは違います。

だからこそ、すべてを描き手側で決めてしまわず、見る人それぞれの感性や記憶で補完してもらえる余白を残したいと思っています。

土居だもんさんが手がけたファンアート

SNS、グッズ、ゲーム。「どう見られるか」で絵を変える

――使用用途によって構図や見せ方を変えることはありますか?

用途によってかなり描き分けています。

SNSに載せるイラスト、キービジュアルやグッズとして使われるイラスト、ゲームの中で使われるイラストでは、それぞれ見る人の熱量や、作品を見る時間が大きく違います。

SNS用のイラストは、タイムラインをスクロールしながら比較的短い時間で見られるので、短時間でも内容や面白さが伝わることを重視します。

あえて階調をつけすぎず明るい色味にしたり、演出を少し強めたりして、少し「ジャンキー」な味付けにすることもあります。

一方、キービジュアルやアクリルスタンドなどのグッズは、「この絵を手元に置いておきたい」と思ってくださる方が、何度もじっくり見る可能性があります。

そのため、キャラクターをしっかり描き切ることや、グッズに合った色使いや構図、繊細さを大切にしています。

「自分はこういう絵を描く」だけではなく、「誰が、どのような状況で、どれくらいの時間をかけて見るのか」を考えて表現を調整しています。

土居だもんさんが手がけたファンメイドゲーム「Peace of Lambda」のキャラクターの立ち絵

土居だもんさんが手がけた個人VTuberデザイン

土居だもんさんが手がけたIRIAM配信用アバターデザイン

「Page of Lambda」の世界を、自分なりに掘り下げる

――「ラキミーまでの道のり」を制作するとき、特に大切にしたことを教えてください。

特に意識していたのは、自分なりに「Page of Lambda」の世界観を解釈し、そこからさらに想像を広げることでした。

登場する「オーブ」というキーアイテムを見たときに、非常に高度で精密な機械であることが気になり、「この世界には、かつて現在よりも高度な文明があったのではないか」と考えるようになりました。

当時好きだったディストピア系の海外ゲームなどからも要素を参考にしながら、それらをそのまま持ち込むのではなく、「Page of Lambda」の世界に合う形へ組み替えて、自分なりの設定を作っていきました。

友人とも「この世界では、かつてこういうことが起きていたのではないか」と話しながら、かなり細かいところまで世界観を深堀りしています。

そして、その世界観を見せるため、本来なら主題になるはずの「さんばか」の3人を、あえて後ろ姿だけにするという演出にも挑戦しました。

キャラクターそのものを前面に出すのではなく、「彼女たちがどんな世界を歩き、どこへ向かっているのか」を見る人に想像してもらいたかったんです。

今の自分だったら、ここまで思い切った采配はなかなかできないかもしれません(笑)。

当時だからこその勢いや、「自分はこれを描きたい」という気持ちが、そのまま作品に出ていたのだと思います。

ゲームのスチルは、物語への想像を補助する存在

――『Piece of Lambda』のように物語の中で使われるイラストでは、どのようなことを意識していますか?

『Piece of Lambda』でスチルイラストを制作した当時は、今以上に経験が浅かったこともあり、「一枚の絵としての完成度を高めること」を強く意識していたと思います。

今の自分が同じ制作をするのであれば、シナリオやセリフをしっかり読み込み、クライアント様の意向や参考資料をもとに、自分なりの解釈も加えながら方向性を擦り合わせていきたいです。

スチルには、文章から物語を受け取る人の想像を補助し、制作側が意図している情景や感情までスムーズに導く役割があると思っています。

なので、キャラクターだけではなく、空間や光、色、構図などを含めて、その場面がどういう場所で、どんな空気の中で起きているのかを想像しやすくすることが大切にしています。

自分にとって、スチルは一枚の作品として自分が見せたいものを完結させるイラストとは違い、あくまで物語の中に存在する一場面です。

絵としての美しさを追求しながらも、その絵を見た人が自然に物語の中へ入っていけることを意識したいと思っています。

土居だもんさんが手がけたスチル

依頼では「ラフ3案」で新しい可能性も提案

――イラストのご依頼は、普段どのように進めていますか?

まず、納期、ご予算、実績公開の可否、使用用途、納品データの仕様、制作内容などを確認します。

制作内容については、テーマや雰囲気、キャラクターの性格・設定・イメージ、描画人数、背景や差分、新規衣装デザインの有無、入れたいモチーフやポーズ案など、ご依頼者様の中にある具体的なイメージもできるだけ共有していただくようにしています。

最初に情報をしっかり確認することで、こちらの解釈とご依頼者様のイメージに大きなズレが生まれないようにしています。

その内容をもとに、ラフ案を3案ほど制作します。

一つは、ご依頼者様の要望にできるだけ忠実に沿わせた案。もう一つは、いただいた内容をもとに自分なりの解釈を強く加えた案。そして、その中間にあたる案です。

ご依頼者様が最初にイメージしていたものだけでなく、「こういう方向もありかもしれない」と思っていただける選択肢も提案できるようにしています。

そこから選んでいただいた案をベースに細部を相談し、完成後の確認・修正・ブラッシュアップを経て納品します。

関係性を依頼するときは「二人でいるときの空気感」まで伝える

――キャラクター同士の関係性や場面の雰囲気を描いてほしい場合、依頼者からどのような情報があるとイメージしやすいでしょうか?

まず、「そのキャラクターたちが普段どのような関係にあるのか」が分かる資料があると、とてもイメージしやすいです。

VTuberの方であれば実際の配信や切り抜き、ゲームのキャラクターであれば、ライバルなのか、仲間なのか、恋人なのかといった関係性が分かる資料があるとありがたいですね。

特に「仲良し」「恋人」といった言葉は、その内容にかなり幅があります。

恋人でも、付き合いたてで少しぎこちない関係なのか、長年連れ添ったような自然な距離感なのかで、表情や立ち位置、仕草は大きく変わります。

仲の良い二人でも、ラフにツッコミ合う関係なのか、穏やかな時間を共有する関係なのかによって、描くべき空気感は違います。

そのため、「どういう関係か」だけではなく、「二人が一緒にいるときはどんな雰囲気なのか」というところまで教えていただけると、より解像度高く、そのキャラクターたちらしい関係性を表現できると思います。

ただ、最初から完璧な資料や具体的なイメージを用意していただく必要はありません。

「こんな絵をお願いできないかな」と相談していただければ、分からない部分はこちらから確認したり、一緒にイメージを考えたりすることもできます。

まずはあまり構えすぎず、ラフにお声がけいただけたら嬉しいです。

「この人に任せたい」と思われるイラストレーターへ

――今後挑戦してみたい仕事や、活動上の目標を教えてください。

今後は、VTuberやゲームに関わる仕事に、より積極的に挑戦していきたいと思っています。

もともと自分自身、VTuberやゲームが好きだったことがきっかけでデジタルイラストを描き始めたので、いつか自分が好きな作品や事務所の方々と、お仕事として関われるようになりたいです。

広告やライブのポスター、キービジュアルのような多くの人の目に触れるイラストを手がけたり、キャラクターやライバーのデザインにも挑戦したりしながら、「この人に任せたい」と思っていただけるイラストレーターになることが大きな目標です。

また将来的には、駆け出しのクリエイターをサポートできるコミュニティも作ってみたいと思っています。

自分自身も、進む方向に迷ったり、同じような熱量を持つ仲間を見つけられず孤独を感じたりした時期がありました。

だからこそ、夢や熱量を持つ人たちが、少しでも挑戦を続けやすくなる場所を作れたらと思っています。

土居だもんさんから、作品を見てくださる方へ

――最後に、作品を見てくださっている方や、これからイラストを依頼してみたい方へメッセージをお願いします。

一番伝えたいことは、こんな自分を応援してくださって、本当にありがとうございます、ということです。

まだまだ道半ばですし、これから叶えたい夢もたくさんあります。

そんな自分の作品を見つけて、好きだと言ってくださったり、応援してくださったりする方がいることは、本当に当たり前のことではないと思っています。

自分の絵に価値を見出してくださる方がいるからこそ、今の自分があります。

だからこそ、応援してくださる方々のためにも、一日でも長く絵を描き続けたいです。そして、いつか自分が夢を叶えたときには、その喜びを一緒に分かち合えたら嬉しいと思っています。

作品を見てくださる方、応援してくださる方、そして大切な作品を任せてくださるクライアント様への感謝を忘れず、これからも地に足をつけて、一枚一枚の絵と向き合っていきたいです。

土居だもんさんの活動・依頼先

土居だもんさんの作品や活動内容、依頼できる制作については、プロフィールページでも詳しく紹介しています。

土居だもんさんのプロフィールを見る

X:https://x.com/Doi_art
Xfolio:https://xfolio.jp/portfolio/doidamon
FANBOX:https://doi-oekaki.fanbox.cc/
Skeb:https://skeb.jp/@Doi_art